フロン点検(簡易点検)の法的根拠と実施義務

フロン点検(簡易点検)の法的根拠と実施義務

フロン排出抑制法の改正により、業務用の空調機器やショーケースなどのフロン類使用機器の管理者には、定期的な点検が義務付けられています。特に簡易点検は、機器の規模に関係なく全ての管理者が実施しなければならない重要な取り組みです。この点検は、フロン類の漏えいを早期に発見し、地球温暖化防止に貢献する目的で行われます。今回は、多くの事業者に関係する簡易点検について、その実施方法や重要なポイントを解説していきます。

フロン点検 簡易点検の法的根拠と実施義務

フロン排出抑制法第16条において、業務用のフロン類使用機器の管理者には、3ヶ月に1回以上の簡易点検が義務付けられています。この法律では、「管理者」を機器の所有者だけでなく、実質的に管理権原を有する事業者と定義しています。例えば、テナントビルの場合、賃貸借契約の内容によって、オーナーまたはテナントのどちらかが管理者となります。違反した場合は、都道府県知事からの指導・助言、さらには勧告・命令の対象となり、命令違反には50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

 

【具体例】
飲食店チェーンAでは、全店舗の厨房業務用エアコンについて、店長が毎月1回、チェックシートを用いて簡易点検を実施し、記録を3年間保管しています。

 

2. 簡易点検の具体的な実施方法と確認ポイント
簡易点検は、専門的な知識がなくても実施できる目視、聴覚、触覚による検査です。主な確認項目には、室外機や室内機からの異常音の有無、機器の揺れや腐食・錆の状況、油にじみや熱交換器の霜付き具合などが含まれます。点検の際は、環境省が公開している「簡易点検の手引き」を参考に、定められたチェックリストに従って実施することが推奨されています。また、点検結果は、機器ごとに記録を作成し、特異的な異常の有無や経時変化を把握できるよう、適切に保管する必要があります。

 

【具体例】
総合スーパーBでは、食品売場の業務用冷蔵ショーケースについて、毎週月曜日の開店前に設備担当者が点検を行い、異常音やガス漏れの有無、温度変化などを専用アプリで記録・管理しています。

 

3. 点検記録の作成と保管のポイント
フロン排出抑制法に基づく簡易点検では、点検記録の適切な作成と保管が重要な義務となります。記録には、点検実施日、点検箇所、点検結果、点検者氏名などの基本情報を漏れなく記入する必要があります。特に注意すべきは、漏えい等の異常が見られた場合の詳細な状況と、それに対する措置内容を具体的に記載することです。点検記録は、機器ごとに作成し、その保管期間は機器を廃棄した日から3年間と定められています。また、定期点検の記録と区別して整理し、行政からの要請があった際にすぐに提示できるよう、電子データまたは紙媒体で確実に保管しておくことが求められます。

 

【具体例】
点検記録の記載事項:
・空調機器A号機(第一種特定製品)
・点検実施日:2024年1月15日
・点検者:環境 太郎
・点検結果:圧縮機付近からの異音を確認、オイル漏れの形跡あり
・措置内容:専門業者に修理を依頼し、2024年1月20日に修理完了

 

フロン点検における簡易点検は、地球環境保護と法令順守の両面で重要な取り組みです。定期的な点検と適切な記録管理により、フロン漏えいを早期に発見し、必要な対策を講じることができます。また、点検記録は法定義務であり、違反した場合は罰則の対象となる可能性があるため、確実な実施と保管が必要です。企業の環境への責任と法令順守の意識を高め、持続可能な事業活動を実現するためにも、簡易点検の重要性を理解し、適切に実施していくことが求められています。フロン排出抑制法の理解を深め、確実な点検実施と記録管理を通じて、環境保護に貢献していきましょう。

 

エアコンフロン点検